「何言ってんの。私だって美咲が着るような服は着れないわよ。ああいうのは長身美人じゃないと似合わないからね。今さらでしょ。今日の格好といい何かあったの??」

周りに散乱する服をたたみながら尋ねてみる。
美咲は少しの沈黙の後、ソファーに深く座り直し足を組んだ。

「陽介。あいつが『もうちょっと可愛いかっこできねぇのか』って言ったのを思い出したの。もう吹っ切れてんのに時々ふっと頭をよぎるっていうのかな。ガラじゃないけどさ。」

陽介は確か美咲が中学2年から大学に入るまで付き合っていた彼氏だ。
結婚まで考えていたのに大学に入った途端むこうが浮気をしてこの前別れ話を切り出したと聞いていた。
もう吹っ切れているはずはないだろうが、私も美咲も基本的に深い話はしない。
近況報告のような話をすることはあっても深くまでは話さないし聞かない。
今回も適当に流すのが正解なのだろう。

「男なんて星の数ほどいるんだからね。あんたにはもっと良い男がお似合いよ。」

軽く笑って美咲の頭を優しく小突いた。