「ぷ、そんなんで大丈夫かよ。」


がちがちになっている私を見て、RYOは笑いながら私にでこぴんしてきた。


『いた〜い。』

本当にRYOのでこぴん痛すぎ〜。でもそのおかげで少し緊張が解れた。



「よし、じゃあ始めよっか〜」

監督さんの声で私たちの撮影が始まった。





……ついにキスシーンだ。



目をつむって……
RYOのセリフで目を開けて。のはずだった。




チュッ



……え?


何が起きてるかわからなかった。

唇にはあたるはずのなかった感触がある。



なんで?振りじゃなかったの?嫌だよ……


ほんの何秒間だけど、私にとってはすごく長い時間に感じた。



そしてRYOがセリフを言うと、私も慌ててそれに続いた。






『ありがとうございました。お疲れ様です。』

撮影が終わり、私は皆に挨拶をしていく。



「綾乃ちゃん振りって言ってたけど、本当にキスしてくれたんだね。びっくりしたよ〜おかげでいいシーンがとれた。」

嬉しそうに監督さんが話かけてきた。



私が一番びっくりしたよ…。その日はRYOとは話すことなく仕事が終わった。



家についた私が自分の部屋に入ると、なんだか涙がでてきた。



この仕事についたなら、こんな事で泣いてたらキリがない事は分かってるけど……


本当に嫌だった。


祐介に会いたいよ。