俺は握りこぶしをひざの上で固くした。
「病院は紹介してもらったけど、それ以外は絶対自分達でどうにかしたくて・・・だから、これが私の今の力で出来る精一杯」
そう言って小さな部屋を見渡す彼女の瞳は、
悲しみにもう慣れきったような、そんな色をしていた。
そして、それがせめてもの抵抗だって、悲しそうに笑うんだ。
全ての事情が分かった俺には口に出来る言葉もなかった。
ただ・・・・・・
無理したように笑う実桜が。
涙をこらえる実桜が。
桜の写真を大事そうに見つめる実桜が。
そして、それでも佑さんの名前を言う時にかすかに幸せそうな顔を浮かべる実桜が。
愛しくて愛しくてたまらなかった。
お前、本当にバカだよ。