最初、見間違いかと思った。
けど、それは見間違いでもなんでもなかった。
「実桜さん。お久しぶりです」
着物姿で歩くその方は、佑のお母さんだった。
佑のおかあさんは、佑と私が別れたと言うことに対して
「本当に、本当にありがとう、実桜さん」
と深く頭を下げられた。
「お陰で佑の・・・婚約も決まりました。二階堂の家を守ることがこれでやっとできます」
私はうつむいて下を向いたまま、一番聞きたかったことを尋ねた。
「あの・・・佑、さんはお医者さんになれますか?」
佑のお母さんは少し沈黙してから、こう言った。
「はい。少し身がはいらない時期もありましたけど、今は立派に跡継ぎとしての自覚を果たそうとしているみたいです」
「そう・・・ですか。それなら・・・よかったです」
ほっとした表情で顔を上げた私を見て、佑のお母さんは何か言いかけたけど、すぐに口を閉じた。
「あと、母をこんなにいい病院に紹介していただいて本当にありがとうございます」
深く頭を下げた。
本当にそれは感謝してもしきれないから。