閉じられた病院の正面入り口からじゃなくて、専用の入り口からもう親しくなった守衛さんに挨拶をして中へ入る。



コンコンッ



ノックをして開けると


「実桜!おかえり」



大好きな私のママがベッドに腰掛けて本を読む目を嬉しそうに細めるんだ。



「ママ、ただいま」




ここは、二階堂病院傘下の小さな病院。病床数もそんなにないけど、ママのようによく原因がわからない痛みを持つ患者さんを丁寧にみてくれるっていう話だった。


話だった、っていうのも私達は夏が始まる前突然ここに連れてこられたから。


だけど、確かにここの先生方はとても優しくて頼りになる方たちが揃っておられるし、看護婦さんも丁寧に仕事をしてくれる方ばかりだと思う。


この病院はみかけよりもずっと高水準でなかなか紹介がないと入れないのよ、と聞いたのは何度もある。


ママはどうしてかしら、って首をひねってたけど、私にはもしかして・・・っていう確信があった。


それは一度だけこの病院にあの人が来たことで、ようやくその確信が現実だったってわかったの。