その男が言うのには、ナンパをした女の子から1時間だけという約束で彼氏のふりをしてほしいと頼まれたことがある、というものだった。
「すっげー可愛い子だったからさ、いっそ本当に付き合おうよ、ってちゅ-しようとしたら殴られちゃって逃げられちゃった。何?あんたらあの子の知り合い?もしフリーなら紹介してよ」
俺らは自分の女をほっといて紹介を頼むそいつには目もくれず、
近くの喫茶店でお茶を飲んだ。
「どういうこと?」
チエが一番最初に言葉を発した。
「佑に、見せ付けたってことか。自分には彼氏がいるんだ、って」
ジュンが後を追う。
「あきらめさせるために・・・・・・?」
どうして?
その答えはどうやっても出ず、そして実桜への携帯はその夜もつながることはなかった。