「元……!?」
ふと横から声がして、そのほうを見ると、
何冊か本が入ってる籠を手に持って、あいつが立ってた。
「よ!」
「よ、じゃないよ。いつ来たの?ってそっか、チエの結婚式だもんね」
実桜はふふっと笑って俺の姿を眺めた。
「なんか…ワイルドになってるよね。しかも寒そう…」
「お前、それを言うなって。季節を忘れてたんだよ」
すぐに時間を飛び越えて話せる。
実桜とは中学以来の親友だから。
実桜…。
なんかやせたな。
長かった髪を肩までに切ったんだな。
なんか大人っぽいし。
化粧のせいか?
じろじろ見る俺の眼から恥ずかしそうに手で隠して、
「あんまり見ないでよ。どうせ相変わらず子供っぽいな、って笑うんでしょ?」
「いや…」
思わず出かかった本当の感想を俺はすんでのところで止めた。
きれいになったな、
って言いたかったけど。
「相変わらず胸が小せぇな、って思っただけ」
なんて、ふざけてしまったのは、少しだけ昔の思い出が胸によぎったから。
俺のほろ苦い初恋の思い出。
それを隠すので精一杯だったんだ。