「どんな奴?」


やっとの思いで出した言葉は、本当は一番聞きたくない質問だった。


「ごめん……」



彼女からはその答えは聞けなかった。


けど、もっと聞きたくなかったよ、そんな答え。


「……もうお付き合いしてるの」



頭がガンッと鈍器で殴られたような嫌な感触がする。



さっきまでとは違う痛みが俺の体全体を包み込んだ。



「そう……」


「……」


「だから、母さんに謝ったの?先に俺に言ってくれればよかったのに」



我ながら少し情けない言い方だよな。


ミオはその言葉を聞いて少し目を丸くしたような気がしたけど、


少し何かを思い出すように考えてから


「うん…」


とだけ、答えた。








病室を出る時ににこっと笑った彼女は、「お大事に」と小さくつぶやいて俺の前から姿を消した。



それが、俺たちの最後に交わした言葉になった。