「ミオ……走ってきたんだろ?座れよ」



目で示したベッド横の丸椅子に、けど彼女は座ろうとはしなかった。



「祐…本当にごめんね」


「何?なんだよ?」


なんかいやな予感がして、俺は笑うしかなかった。


「私の気持ちは…変わってないの」


「……」


俺は黙って手を伸ばし、ミオの手を握った。


「俺、なかなか会えなくてごめん。一緒に遊びに行ったりできなくてごめん。お前にさみしい思いさせてたのかな、ってごめん。今さら気づくなんて、本当にごめん。けど……」


「違うの!」


俺の言葉をさえぎる彼女の口調は少し厳しくて、俺は思わず息をのんだ。


彼女は握られた俺の手をいつものように握り返すこともしないまま、


そしてうつむいたまま、言葉をつづけた。



「私が悪いの……別れたいのは私の勝手だから……好きな人が、できたの…」


「…嘘だろ?」


「ごめん…ね。ごめんね」



何度も何度も謝る彼女の姿はいつもよりとても小さく見えた。



信じられない思いで、けど、彼女を握りしめていた手から力が抜けて、



腕がぶらんと落ちた。