ほどなくして部屋に戻ってきた祐は、


「ミオ?」


何か変な感じを受けたんだろう、心配そうに私の名前を呼んでくれる。



私の大好きな声。


いつもいつも助けてくれるその声も、


今日は、つらいよ。



「ミオさん、ちょっと雨にびっくりされたのかもしれないわね」



「ちょっと外に出ようか、ミオ」


「うん…」



ふらふらする。


感覚のあまりない脚をひきずって玄関へと向かった。



「ミオさん、また遊びに来てな」


祐のお父さんが優しそうに言ってくれるけど、


後ろでお母さんはやっぱり私の眼をみてくれない。



てか、今は無理。


たぶん目が合えば、罵ってしまうかもしれない。


その前に泣いて言葉にならないかもしれない。



生まれて初めてこんなに人から否定されたことを


私はまだ受け止めきれてない。



「さよなら」


とだけ、目を伏せたまま言った祐のお母さんは絶対にまた来てね、とは言わないんだろう。



私は、



「おじゃましました…」


とだけ呟いて二階堂家を後にした。