「元?」


「お前の無理するところ・・・・・もうみたくないんだ」


「・・・・・・」


元・・・。



「うそ!本当は、俺が緊張しすぎで全く余裕ねぇの」



「元」



「だから、また今度にとっておく」


そう言って彼は私の髪の毛にそっとキスをした。



そんなこと意識してなかったけど、体から抜けていく力が、思ったより緊張していたんだな、っていうことを私に教えてくれる。



「元・・・」


「ん?」


「ありがと」


「何だよ、急に」


「今まで本当に私元に助けてもらってばっかりで。優しくしてもらって・・・」


「いいんだよ。俺がお前のこと好きだったんだから」


「・・・・・・」


カーテン越しの月明かりが薄く私達を照らしている。


「元、さっき学校の話なんだけど・・・」


そう私が切り出すと、その言葉の終わりを待たずに、


元は上を向いたまま、話し出した。


「実桜はさ、今は泣き虫だけど、今にすげー俺がビビるくらいのすげーおっかちゃんになってさ。俺は仕事サボっていつも怒られてるんだ。



将来は実家の店先で、焼酎とか日本酒とか置いてあるそばでカクテルが飲めるようなコーナーを作りたいな。


実桜はそこの看板娘。


こえーお母ちゃんが、看板娘なんだぜ?笑えるだろ?


けど、俺はずっとずっとお前を・・・・」



元?


「なんか、疲れたかも。寝るわ。お前も寝ろ」