「実桜ちゃん、お母さんの具合どう?」
おばさんがコップのお茶を私の目の前に置いて、心配そうな表情をした。
おばさん…。
「ありがとうございます」
一口飲んだお茶は温かくて、そして懐かしい味がした。
「実桜ちゃん・・・辛かったら人に頼るんだよ。もっと甘えてもいいんだから・・・」
そういえば、同じことを高校時代、ラーメン屋さんで、聞いた。
私は忙しそうに動き回る元を見つめた。
「ほら、家さ、男しかいないから、いつでも遊びに来てね。なんなら元のお嫁さんに実桜ちゃんがなってくれたら、もっと嬉しいんだけど・・・」
「おふくろ!余計なこと言うなよ」
聞いてないと思ってた元が、間髪いれずに言葉を挟んだ。
「だって・・・」
といっておばさんは少し声を潜めて、私の耳元でささやいた。
「あの子中学の時から実桜ちゃんが大好きだったんだから。今回も帰って実桜ちゃんのことばかり心配してるもんだから」
そうして、ふふっと笑ったんだ。
ええっと・・・
どう反応したらいいんだろう。
「おふくろ!」
言葉が聞こえてるわけないのに、元が大声を出すから、おばさんは肩をすくめて舌を出しておどけてみせた。
「ほら!実桜、こんなとこにいたらろくなこと吹き込まれないからな。それに時間だし、行くぞ」
引っ張るように声をかけられてあわてて席を立つ私の手を
ぎゅっと握って、おばさんはふわっと笑った。
「実桜ちゃん、また、来てね」
おばさんの手はすごく温かかった。
ありがとうございます。
元気をたくさん、頂きました。