雅が母さんに話しかけてる。
母さんは、最近あんまり元気もないから、こうやって雅に外に連れ出してもらうのも悪くないのかな、なんてぼんやりと思う。
「雅・・・」
とカーテンの向こうへ声をかけようとした瞬間、
信じられない言葉が俺の耳に入って、俺は一瞬で体が硬直してしまった。
「それにしても、お母様のおかげです。私が佑さんと結婚できるのも」
「えぇ・・・」
「所詮、私たちとあの子のいる世界は違うのに、いつ気づくんだ、って感じですよね」
あの子・・・?
誰の、話をしている?
「まぁ、案外あっさりと引いてくれたから助かりましたけどね・・・母親の病院代だけじゃなくて、生活費も受け取ればいいのに、本当、強情な人」
雅の、声が、クリアに聞こえる。