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婚約の指輪は、正直なんでもいいと思った。



雅に引きずられるように入った宝石店で俺はただ、ぼーっと空を眺めてた。



暗い雨が降る前の曇り空。



「ね、佑くんはどれがいい?」



なんでも。



俺がほとんど返事をしないのに雅はくるりと向きを変えて、なにやら一生懸命店員と話をしていた。



そして出来上がったのは、今流行のブランドのものらしいけど、


俺にしてみればそれはどうでもいいことで。


雅は嬉しそうに笑って、何度も空にかざしてみてた。




「パパも楽しみにしてるんだから」


とも言いながら。



俺ら家族がそれに弱いことを十分知ってるんだな、って思った。