ぶつけたい怒りはたくさんあるのに、


「佑には幸せになってもらいたい」



それが、実桜の願いであるならば、


俺はそれを壊すわけにはいかない。


だから、誰にも知られてはいけないんだ。



「実桜、本当にお前それでいいのか?」


アパートの扉を開けて、もう一度聞くと、


実桜は、にこっと笑って、うん。と深くうなづいた。



その彼女の表情がとてもきれいだったから、


俺は、ただ実桜の髪の毛をくしゃくしゃとして



「お休み」


と言うしか出来なかったんだ。