「じゃあ,ここにサインしてもらえます?」


何も聞かずにただただ紙とにらめっこしてた私は,あまりの不意うちにびっくりした。







近いっ!!
近いってばっ!!!!










やつの顔が,すぐ,目の前にある。

サインする場所を指すために,私の紙を覗き込んでいるのだ。









ヤバい。
綺麗。




こんな至近距離でもつい見とれてしまう顔立ち。

さっきまで腹が立っていたやつの顔にみとれてしまうなんて。
一生の不覚っ。









やつの吐息が私の前髪にかかって微かに揺れる。


だから,近いって!!!!




心拍数が一気に上がる。




やつの桃色吐息と,悩殺フェイスのせいで,私の頭は思考停止。











私を腹立たせたやつは,私の頭のてっぺんから,つま先の先までをも,一瞬にして,
まっピンクに
染めてしまった。