ありえない…
ありえない…!!
怒りのあまり,ストッキングがなかなかはけない。
足あげて履いてたから,絶対見えた…
ガックリとうなだれた。
私,一生の不覚。
看護士さんに言われた時,着替えときゃ良かった。
面倒くさがらずに。
やっとのことで履き終えた私はズボンをはいて,やつを探すために,カーテンから顔だけ出した。
いた。人のパンツ見るだけ見て逃げたやつ。
閉ざされたカーテンの前で腕組みをしながら右から左,左から右,と徘徊していた。
「あのっ…!着替えましたけどっ…!」
用件だけ言って,さっさと中に引っ込んだ。
今更外で待ってたって,もう,見たじゃん。
幼稚園児みたく,ぷうっと膨れた。
やつは無造作にカーテンを開けて入ってくるやいなや,紙を私に渡した。
「まあ,問題ないと思いますが。万が一の為に,輸血を承諾する同意書を書いて頂きます。」
そう言って,椅子に座って説明をし始めた。
何事もなかったみたいに。
あんたは数分前,私のパンツ見たんだよ!?
何でそんな平然としてる訳?!
べ,別に…謝られたって,気まずくなるだけだけど……
で,でもっ!!!
そこまで何にもなかった,みたいな平然な顔,普通できる!?
やつが説明してる間,膨れたままで紙と,にらめっこ。