するとライのカウント。
今日のラストはバラード。
イントロのフレーズを弾いた途端、拍手と歓声。
このバラードを歌うライの声は、決まって観客を泣かす。
ライが自分で書いた歌詞。
……書けなくなる直前に書いた、詞。
滑るように会場に広がった歌声は冷たい雨のようにオーディエンスに降り注ぐ。
切なくて、苦しくて、崩れそうだったライ自身の。
怪我をしてドラムが叩けなくなった彩都に向けた言葉たち。
高音で掠れるライの声を、俺のギターがふわり、包んだ。
いつもは悲しさだけのその声音が、今日は少し違った。
その声に温かさが加わった。
ライの意識の現れ。
……ふぅん、いい声になった。
マイクを握りしめ、全てを注ぎ込むように歌うライの横顔を見ながら、不覚にも視界が揺らいだ。
泣いたわけじゃないからな!