彼らが結局インディーズに戻らずにいるのは東條がここにいるから。
彼のプロデュースの方針は今までの中野とは全く違っていて、とにかくとことん、3人のやりたいようにやらせてくれていた。

……が。

東條も東條でやはり彼らの音楽を最大限にいい仕上がりに、という考えが働いてか、レコーディングの鬼と化している。




「ぐぁ~~っ!!疲れた!!クソ東條の野郎!!」

一時休止、ということでブースから出てきたライは、両腕を思い切り頭上に上げて伸びをしながら愚痴を口にする。

「まぁまぁ、あの人も俺たちの為に厳しくしてくれてんだ。ちょっとは我慢しろ」

「分かってんだけどさぁ……」

諫めるショウの言葉に、アヒル口になって答えるライの顔は写真に撮りたいくらいに変顔だ。とタキは思う。

しばらく新曲についての話題でなんやかんやと話していたら、ライが急にケータイを取り出した。

「あ、……」

画面を見詰める彼の口元が微かに緩んだ。

「なになに?!なににやけてんだよ?!」

「な、ちょっと見るなよ!」

慌ててケータイを隠そうとするライの手からタキはそれを奪い取る。
その画面をショウと一緒に覗き込めば……。