「テメェそんなんでいいと思ってんのか?!もっと気持ち入れて歌えよ!!」
うおぅ!!?
レコーディングスタジオの防音扉を開けた途端、タキの耳に飛び込んできた大音量。
東條?!
おずおずとドアを閉めながらブースの中を確認すれば、ブスっとした表情でマイクを前にしてるライ。
「……なに?またやってんの?」
「あぁ、さっきからかれこれ20テイクくらいやり直してる」
「マジかよ?!」
タキは渋面を作りながら東條のピリピリした背中と、ライのブサイクな面を交互に見比べた。
……東條がこんなスパルタだなんて、詐欺だ。
彼が正式にCrimson Scarのプロデューサーになって初めてのレコーディング。思っていたよりも作業は難航していたりする。
レコーディングになると、アイツ人が変わるよな……。
なんてタキはこっそりと心の中で思う。