《こんなバンドに出会った自分を、最高に幸せだと感じた》



《だからけしかけた。これでもかっていうくらい、酷く、汚いやり方で》



《僕に手伝えるのは、これくらいだから。君たちのいちファンとして、は》



雑誌に載っていた文章が何度も何度も頭をよぎった。

それと同時に情けなさと怒りと、驚きと……そして。

胸が熱くなるくらいの嬉しさが心に湧いてきて、堪らなくなった。

ホント……なに、あのオッサン。あれじゃあただの……、ただの、俺たちのファンじゃねぇかよ。

「どんだけ遠回りな……」

まだ止まない笑いを抱えたまま、俺は立ち上がった。
このままじゃ怪しい奴だっていって警察呼ばれそうだから、さっさと家に帰ることにする。

「あ、その前に」

やっぱりさっきの雑誌を買ってこようと思い立って、俺はきびすを返していた。

その足取りはひどく軽かった。