薄汚い壁に軽くもたれて、ポケットからセーラムライトを取り出す。櫻井はどうしてか俺が煙草を頼むとコレを買ってくる。

「違うんだけどなぁ……、ま、なんでもいいけど」

ひとりでに漏れる苦笑をそのままに、一本取り出して口に咥えた。その時。

スッと横からライターの火が差し出された。

「煙草は体に良くないよー」

にこにこ笑いながらこっちを見ているのは……。

「東條……」

「どうも」

ジリ、と火の点いた煙草の微かに燃える音が、やけに大きく聞こえた。