渋谷にあるライブハウス“CLUB ROULETTE”。
俺たち3人はいつもよりピリピリした空気の中、ライブのリハを行っていた。
『今度のライブに彩都連れて観に行くからさぁ』
そんなメールが届いたのが先週、テレビ局での一件のあった翌日だった。
ホントに連れてくんのかよ?彩都、大丈夫なのか?
ギターのサウンドチェックをしながら、ボーっと考えていたら急に視界が暗くなった。
「てめぇ、ちゃんと集中しやがれ」
俺に当たってたピンスポを遮るように、立ちはだかってるライが睨んでた。
「おぉ、わり……、てかライは緊張しねえのかよ」
「何が?」
「何がって、彩都」
「……そんなのいちいち気にしてたらライブできねぇだろ」
へっ、としかめっ面のまま鼻息も荒く、くるりと踵を返してライはセンターのマイクスタンドまで戻っていった。
その背中を見つめつつ、俺はぼそりと呟いた。
「……ある意味、ふっきれてる……のか?」