俺は自分よりも低い所にあるライの頭にポン、と手を乗せ、おもむろにグシャグシャと掻き回した。

「オマエはさぁ、何でもかんでも悪い方へ考えるのな。もう少し楽に考えなさい」

ホントに、コイツは全部自分のせいにしたがる。悪い癖。

ライの頭に置いた手のひらを今度はそのまま背中まで下ろして、軽く小突いてやる。

「なぁライ」

ショウが柔らかい声音に変えて、口を開いた。
その瞳には、さっきよりも暖かい光が浮かんでた。

「彩都の事がショックだったのは仕方ない。けど、それでオマエがさっきの生放送で歌わないってのは少し違う。オマエはサイトの為だけに歌ってんのか?……あの番組はサイトだけが観てる?んなわけねぇよな?」

ショウの言いたいことが分かった。

そこまで言って、ショウは再び煙草に手を伸ばす。
その手の動きを無言で追いかけながら、俺はその台詞の後を継ぐように続けた。

「ライ、ショウの言う通りだ。あの番組は俺たちだけでやってんじゃない。スタッフだって、司会者だっている。……それにさ、テレビの向こうにはオマエの歌が、俺たちの音が好きで楽しみにしてるヤツだっているんだ。わかるか?そういうヤツらに対して俺たちは責任がある。どんなにキツくたって、俺たちは聴いてくれてる人達にちゃんと音を届けなきゃなんない」

そこまで口にして、ふとこんな台詞どっかで聞いたな、なんて思った瞬間。

アイツの顔が思い浮かんだ。

あぁ、海斗だ。アイツの言ってたことそのまんまだ。