俺の頭に浮かんだのは、彩都の事を苦々しげに話していた、珪甫の顔。
「………」
指先で火の点いてない煙草を弄びながら、俺は最初の一言を考えていた。スルリと言葉が出てこない。
「そんなに言いにくい?……彩都のこと」
「…っ!」
思わず息を呑んで、一度は逸らした視線をまた合わせれば、ショウがさっきまで浮かべていた鋭い瞳を、柔らかい色に変えてこっちを見ていた。
「あのさ、一応言っておくけど……。オマエもライも何年俺と一緒にやってんの?遠慮とか気遣いとか全然いらないんだけど?だいたいバンドに関わることなら、なおさら。なんだって話してほしいんだよね、俺としては」
そう言ってわざとらしく溜め息を吐くショウは、怒ったり苛立ってる様子はなくて。
むしろ心配してくれてる様子がありありと見てとれた。