「……東條が言ってたのはそれかぁ」
数分後、昨日の偶然の路上ライブについて話し終えた俺に、ショウはいつもと変わらない声のトーンで呟いた。
「怒んないんだ?」
「怒ってどうすんの?俺はライみたいにガキじゃない」
フッと、鼻で笑うショウは短くなった煙草を灰皿に押し付け、ビールに手を伸ばす。
「でもさ、やっぱ嫌なもんじゃないの?自分のバンドメンバーが勝手に他の奴とやったら」
「別にそれはタキが望んだことじゃないだろ?偶然通りかかって、誘われて一曲弾いただけ。それだけ。そんなの怒る理由になんない」
「……ま、そうだけど」
冷めたショウの台詞に頷きながらも、心の奥でモヤモヤした思いが渦巻いていた。
望んだことじゃない…、けど……。
「楽しかった?」
「え!?」
ドキッと心臓が跳ねた。まるで心の中を読んでたみたいにタイミングのいいショウの問いかけに、視線が彷徨う。