「あそこで殴るとはねぇ……」
くすくす笑いながらマルボロメンソールに火を点けるショウが、視線だけで俺を見る。
「しかたねぇだろ、殴っちまったもんは」
「ま、済んだことはしかたないけどね」
ふてくされる俺の顔を見ながら、まだ笑い続けるショウの膝を蹴ってやる。
「いってぇなぁ、暴力反対」
「うるせぇ」
……数時間前、俺が東條ってライターを殴った後。それでも平然とインタビューを続けた東條に、マネージャーの櫻井が頭が床につくんじゃないかってくらいに頭を下げて、意外にも平穏に撮影と取材は終わった。
帰り際に東條はやっぱり不敵な笑みを浮かべて言った。
『また、近いうちに』
……ふざけんなっつーの!二度とあんな奴の面見たくねぇ!
「タキ、顔ひどいよ」
ショウが向かいから顔を覗き込むようにして、煙草の煙を吹きかけてくる。
「ぶっ?!やめろって!」