『タキ?』

返事がないことに訝しむライの声。俺は仕方なく口を開いた。

「彩都、あのドラマーの従兄弟なんだと。で、今はバリバリにカメラマン目指して頑張ってんだってさ。……ライのことも、俺たちのことも応援してくれてるって」

『マジで?!ホントに元気でやってんだな?!』

「あぁ」

『良かった…マジで良かった……』

耳元で聞こえるライの安堵した声と共に、俺の胸にはジワジワと後ろめたさが広がっていった。

……最低だ、俺。





気付けば電話は切れていて、俺はノロノロとソファまで歩き、ドサリと倒れるように体を横たえた。

本当のことが、言えなかった。言えばライが傷つくのは必至で、傷つくどころか今度は歌うことさえ出来なくなるんじゃないか、と思ったから。

「あ~~、どうしよ、俺……」

グシャグシャと頭をかきむしって、ふと視線をテーブルにやれば、数日前に聴いたPRISONERのCDケース。

「………聴きたい」

無意識に出た言葉。
俺はリモコンを手に、スタートボタンを押していた。





……あの声が何故か無性に聴きたかった。