「なに、それは俺よりもそのボーカルがいいってこと?」
「え?!いえ……そういうことじゃ…す、すみません!」
棘のあるライの声音に櫻井が慌てて謝った。
「ライ~、そんな意地悪言うなって」
俺が苦笑してライの顔を見れば、煙草を押しつぶしながら口を尖らせる。
案外ガキっぽいコイツは、少しのことですぐへそを曲げる。
「ぼ、僕はもちろんライさんの歌声も大好きです!なんていうかこう……他の人にはない艶っぽさっていうか、色気のある声とか?あとステージの上での表情とか…」
「表情って…、どんな顔だよ」
櫻井の言葉が気になったのか、彼の台詞を断ち切るようにライが口を開いた。
少し、興味を引かれたような顔で、やっとマネージャーの顔を見た。今日初めて見たかもしれない。