「多分、憂の記憶を消したのはあの方だと私は思うの。


……だけど貴方は思い出した。


突然にさらって、突然に置いていく……そんな奴でも貴方の気持ちは変わらないの?」



私は力強く頷く。


すると、百合はふっと笑った。



「やっと安心できたわ」



百合は私の体を離して、立ち上がった。


百合はドアの前に立つと、振り返らずに言った。



「あとは……憂が全部決めて……」



その言葉の意味を私はちゃんと理解して、百合の後姿を見送った。




その日の夕食は父と母と食べ、お風呂をすませ皆が寝静まるのを待った。


母その日も私に「おやすみ」を言った。


私は「はい」と返事をした。