「桜の木の音を聞いてるんだ。」


「えっ!?」


「こうして木に耳を近づけるんだ。」


そう言うと、彼は木に耳を当て、目を瞑った。


「ほら、美月もやってみな。」


いつの間にか私を名前で呼んでいた。


ドキッ


一瞬、心臓の鼓動が乱れた。


「う・・・うん。」


私は彼の真似をしてみた。


「ね?聞こえるでしょ?」


今までに聞いたことのない素敵な音だった。


「あっ。そろそろ帰ったほうがいいよ。」


「光は帰らないの?」


「僕はいいから。じゃぁね。」


「うん。ばいばい。」


こうして私は帰った。