「博子ちゃ~ん。ご指名入りました~。」

オーナーの一言で私は男から女へとの変貌を遂げる。

「はーい。」

渋谷にあるオシャレなバー「UNION」。ただ違うのは私ぐらいしかこんな格好の人いないという事。まるで一人だけ新宿二丁目の人の様だけど理由があってこんな仕事をしているだけ。


本当は素敵な出会いがあると望んでるんだけどそうもいかない。その一人に私も過ぎないんだけど。


「なに落ち込んでいるの?」


オーナーである翔也さんに聞かれる。


「俺、このままでいいのかなって。」


翔也さんは少し考えてから答えをくれた。


「君には事情がある。それは僕も知っている。だからってその事情とどう向き合うかっていうのが問題なんじゃないかな?それぐらいしか僕には言えないけど。」


翔也さんはニコッと笑った。この人は何でも見えているようでちょっと恐かった。


「そうですよね。あっ、指名が入っているんで行きますね。」


俺いや私はそそくさとフロアに入っていった。


「まあ、前よりかは元気になったみたいだな。」


翔也さんはそんな事を呟き、そのまま自身の部屋へと戻っていった。