「ごめん。待ったか?」

「黎!大丈夫。待ってない」


30分くらい待ってやっと黎がやってきた。きっと職員室で長いこと先生につかまっていたんだろう。

「嘘つけ。鼻、真っ赤だぞ」

つん、とあたしの鼻をつつく。あたしは寒いとすぐに鼻が赤くなる。それでいつもトナカイとかって笑われていた。

そんな黎のしぐさに自然と顔がほころぶ。あたしのことちゃんと見ていてくれたんだ、小さなことだけどなんか大切にされてる気がしてとても嬉しかった。あたしは黎が大好きだった。
だから気づけなかったんだ。このときの黎の表情に。