頬をかすめる風が冷たくなってきたころ。あたしは玄関で黎(れい)を待っていた。

秋月黎。野球が超得意で、みんなが受験勉強で忙しいのに難なく名門校に推薦合格が決まっていた。野球バカで愛想なくて、でも優しくて…。あたしの大好きな彼だった。
黎の合格した高校は学力もトップレベルで、何もかも平均的なあたしにはきつかったけれど、大好きな黎と同じ高校に行くためなら、大嫌いな勉強も苦ではなかった。