「理緒から聞いた“泥になって消えた旅人”…これも呪術じゃ。恐らくは呪術で人の屍肉と泥に呪いを唱える事により造られた微かに意思がある人形のようなものじゃろう」
「人の屍肉…つまり死人の体を使ったって事か」
十夜が誰に言うでもなく、独り言のように呟いた。
「他のも話に聞いたが…すまん、儂には分からんかった」
悔しそうに呟き、賢雄は頭を下げた。
「そ、村長は悪くないですよ!!それに、少しでも分かっただけ…ありがたいです」
日向がそう言うと、賢雄はありがとう…と呟き、顔を上げた。
「……おじいちゃん」
うつ向いたまま、理緒が言葉を溢した。
膝の上に置いている手を、ぎゅっと握る。
「十夜の…、十夜の左腕に巻きついた黒い蛇の事も分からないの…?」
「……ふむ、言うよりも見せた方が早いかもしれん。十夜、左腕を見せてくれんか?」
賢雄の言葉に黙って頷き、十夜は左腕の包帯を外し始めた。
左腕の包帯が全て外された時、理緒と日向は思わず息を飲んだ。