その黒い何かは、嘉禄が呪文のような言葉を呟く度に少しずつ大きくなる。



嘉禄が呟くのを止めると、その黒い何かは…真っ黒い蛇のような姿になっていた。


うねうね動く黒い蛇から、嘉禄は視線を理緒に向けた。



「…貴方に差し上げますよ、お嬢さん」



そう言って嘉禄は理緒の目の前に、黒い蛇を差し出した。




この黒い蛇は危険だと…本能が警告を鳴らすが、理緒は嘉禄の“言霊”により動く事すら出来ない。



黒い蛇はまだ、理緒の姿を上手く認識していないらしく、視線が右往左往する。




しかし、そう時間もかからない内に…黒い蛇の視線が理緒に集中する。



「……っ!!」



恐怖のあまり、理緒は目を瞑った。







黒い蛇が威嚇するような鳴き声を発し、動く気配を感じた瞬間―……




理緒の体が何かに突き飛ばされ、倒れた。