「…っと」
小さく声を漏らしつつ、理緒は木々の間を通り抜ける。
山育ちの理緒にとって、この山は遊び場である。
どの道に行けばどこに着くか大体は把握している。
完全に日が上りきった頃、理緒がやっと崖の下に到着した。
理緒が一息吐いた時、ある異変に気づいた。
辺りに広がる、血の匂い。
右手に短刀を握り、足音を消しながら歩く。
理緒は木陰に落ちていた自分の短刀を拾ったが、血の匂いの原因を探す為に辺りの探索を始めた。
草むらを掻き分けたり、岩陰を覗きこんだりしたが何もない。
更に奥へと足を進めた時、理緒は息を飲んだ。