皆が寝静まった夜中、川の中で立ち尽くす人影があった。

人影は膝元まで川に足を入れ、何かを抱えこむ様に蹲っていた。


……いや、何かを抱えこんでいる訳ではない。

包帯をきつく巻いた左腕を、体で押さえ込む様にしているのだ。


「……っ、ぐぅ…っ」


苦しそうに声を漏らす。

その声から、人影が男である事が分かる。


「…く、うぅ……っ」


左腕を川の中に突っ込み、更に右手で強く左腕を押さえる。

辛そうに目を閉じていた男の瞳が突然大きく見開かれた。



「ぐ、…ぐあぁああぁあぁっ!!」


一際大きくな叫び声を上げたが、ほとんどが滝の音に掻き消され……今だ眠る彼の仲間の耳には、届かなかった。

男は暫しの間、息を切らしずっと動かずにいた。


「っ……はっ、はぁ……はぁ…」


何回か大きく深呼吸をすると、男は体を起こし川から出た。

水浸しになったズボンの裾を強く絞り、ある程度の水を絞り出す。