「さっきの話なんだけど…」
宿の主人に案内された部屋に荷物を置き、一息吐いていた十夜と理緒に日向が声をかけた。
十夜が首を傾げる。
「さっきの…?あぁ、宿のおっちゃんの話か」
「あたし、あの話信じてないんだけど」
理緒が荷物を整理しながら呆れたように呟くと、日向は小さく笑った。
「理緒は昔からそうだもんな。“九尾の話”も信じてなかったっけ」
日向の口から出た、ある単語に十夜は反応した。
「日向…“九尾の話”って何だ?」
「四神大陸に伝わる昔話だよ。…聞きたいか?」
おうっ、と十夜が頷けば日向が一つ咳払いをして話を始めた。