十夜がそう聞くと、少し声を大きくして宿の主人が言った。



「知らない男が狼になって、山の中に消えていくのを見たんだよ!!見たのは儂だけじゃねぇ…、あれは黒狼だったんだ!!」



拳を震わせ…宿の主人は声を張った。



「あの後いくら探しても娘は見つからんかった…黒狼が、きっと娘を連れてちまったんだっ!!」



うーん…と小さく唸っていた日向が、口を開いた。



「もしかして、その山というのは……」
「あぁ。この村から出て、少し行った所にある白山って山だよ」



宿の主人の話を聞き、やっぱりか…と日向は小さく呟いた。


それが気になった理緒が、どうしたの?と尋ねたが日向は後で話すよ…と言って手続きを済ませた。