その理緒の態度を予想していたのか、主人は首を横に振る。



「確かに、儂も若い頃はそう思ってたよ…」
「若い頃は…と言う事は、今は信じているんですか?」



手続きをしていた手を止め、日向が顔を上げた。


宿の主人は、きょろきょろと辺りを見回して様子を伺い…声を潜め、また話し始めた。



「実はな十四年前に、この村の娘が山に行って行方不明になったんだ」



その当時の事を思い出すように、宿の主人は目を瞑った。



「その娘をよ、儂を含めた男数十人で探したんだ。……その時、見たんだよ」
「見たって…何を?」