佐和さんに涙を見られたくなくて俯いたまま体温を計った。
ピピッという電子音が鳴って、確認すると熱は下がって平熱になっていた。
「下がりました。」
やっぱり顔は上げないまま声をかけて佐和さんに体温計を差し出すと、
「1人で泣くんじゃない。」
差し出した手を引かれて佐和さんの腕の中に閉じこめられた。
「ごめんなさい。」
佐和さんのぬくもりに包まれて我慢していた涙が一気に溢れ出した。
「泣くのを我慢もしなくていい。
ただし、泣くのは俺の胸限定。
なっ?」
ぎゅっと抱きしめる腕に力を込めて話してくれる佐和さんに私は頷くことで応えた。
「紫衣、俺は紫衣が謝らなきゃいけないようなことされた覚えないぞ。」
軽い口調の佐和さん。
私の気持ちを楽にしようとしてわざと軽く話してるんでしょう?