私の頭を遠慮気味に撫でてくれる石野さんの手に自分の手を重ねた。
「大丈夫か?」
呆れたように...だけどやさしい彼の声。
私の瞳からは涙がとめどなく流れ止める事が出来ない。
うずくまった状態のままポトポトと車のシートに落ちる涙。
やっと逢えた。
きっとどこかにいる。
運命の人...。
ずっと信じていたけど不安だった。
寂しかったんだ。
「お兄ちゃん...。」
私の頭を撫で続けてくれていた石田さんは私の涙を見て戸惑ったような表情を浮かべたけれど私の体を引き寄せて抱きしめてくれた。
大切な人。
生まれ変わったあなたに逢えるなんて思わなかった。
信じながらも疑った毎日。
あなただよね?
橋の向こうに私を置いていった人。
私の為に橋を渡る決心をした優しいお兄ちゃん。
生まれ変わって逢いにきてくれた。
「おい!!」
泣き止まない私の肩を掴んで引き離すと大きなタオルを頭から被された。
「大丈夫だったか...頭...。」
不器用で言葉少ない石野さん。
でも中身はとっても優しい人。
「ありがとう。大丈夫だよ。」
石野さんはお兄ちゃんの生まれ変わり...。
どうしてそんな確信を持てたのかは解らない。
だけどきっと間違ってない。
掌の優しさは変わってなかったもの。
「嶋田とお前の友達は散歩してくるって言って出て行った。」
「そっか、私寝ちゃったから..石野さんに迷惑掛けちゃったね、ごめんなさい。」
私の言葉を聞くと石野さんは何も言わずに車のドアを開けた。
不思議そうに見ている私に手を差し伸べてくれる石野さん。
それでもキョトンとしている私にイラついたような声で言ったんだ
「散歩、行くんだろ?」
「うん。」
私は石野さんの手を取って車からおりた。
山の上は少し寒い。
夕日が空を茜色に染めていた。
琵琶湖が夕日に染められて赤に輝く。