「おい…。」
ユラユラ揺れる体。
誰かが呼んでいる?
「おい!」
「芽衣ちゃん…。」
「おいコラッッ!!」
「大好き。」
あたたかい人のぬくもり。
決意していたけど、やっぱり寂しくて…
落ち込む私をよく冗談で抱きしめてくれた芽衣ちゃん。
もっとぬくもりが欲しくて私は背中に腕を回してギュッと抱きついた。
「………………。」
硬い体…
腕のまわりも普段より窮屈だ。
頬に柔らかい芽衣ちゃんの胸もない…。
「抱きつくな!!目を覚ませコラッッ!!」
一気に冴える頭。
耳に飛び込んでくるのは焦ったような低い声。
「ごめんなさいッッ」
血の気が引くとはこのことだ。
私は寝ぼけて石野さんに抱きついてたんだ。
とっさに飛び退くように彼から離れたら窓に頭をぶつけて目の前はチカチカと星が舞う。
何やってんだろ私…
最悪…。
あまりの痛みに後頭部を抑えながら悶絶する私の頭に掌が置かれてソッと撫でられた。
ザワザワと騒ぎ出す心臓。
大きくてあたたかい掌。
知っている。
守りたい一心で失った…
あの掌だ。