「紫衣、ここに止まり、俺の帰りを待っていろ。」
私と目を合わせ言葉を発する三成。
「はい、お待ちしております。」
自然に口から言葉が出てきた。
憧れの人。
絶対に逢うことなどないと思っていた人が私に声を掛けてくれる。
私の思い描いたとおり優しく強い人だった。
どの本を読んでも嫌な印象でしか書かれていなかった三成。
それをずっと否定してきた私の考えは間違ってはいなかったのね。
信じていた通りの人物像に涙が溢れてきた。
「どうした、紫衣。」
私を抱きしめ背中を擦りながら声をかけてくれる三成。
「あなたは私が400年後の世界で想像したとおりのお方でした。
それがとても嬉しいのです。」
「ほう、俺は400年後の世界ではどのように伝えられているのだ?」
問われて正直に答えていいのか迷っていると、三成はクスクスと笑い声を立てて言ったんだ。
「よい、紫衣の顔を見ればよい話でないのは解った。言いにくければ言わなくてもよい。」
優しい三成。
私が間違って伝わったあなたの姿をこれから変えてみせるから....。
三成にわからないように私は小さく拳を握って誓った。
きっと変えてみせる。
真実のあなたを遺したい。