二人だけの部屋で私は何を話していいのかわからず、ずっと黙っていた。
静まり返った部屋で正面に座る三成に視線を向けると彼は苦しそうに顔を歪めていた。
私が作法をキチンと守れなかったせいかもしれないと思うと背中の寒さが増してきた。
出て行ってしまった左近さん。
側にいてほしい。
緊張と恐怖が私を包み込み体が震えだした。
「失礼します。」
静寂を破るかのように響いた声は朱里さんの声だった。
「入れ。」
短い三成の声に静かに襖が開けられ盆を持った朱里さんが入ってきた。
「お菓子をお持ちしました。」
三成の前に盆を置いた朱里さんは私の隣に座ると震える私の肩を抱いて言ったんだ。
「さぁ、紫衣もお菓子をいただきましょう。」
朱里さんは戸惑う私の手を引いて三成の側においてある盆の前に私を座らせた。
「お話にはお菓子は欠かせませんものね。」
そう言い残して朱里さんは部屋から出て行った。