左近が連れてきた娘、紫衣。


背格好は俺の知る紫衣と同じだった。


伏せた顔を上げるように左近に促された紫衣。


俺は信じられない気持ちだった。



俺の目の前には川原で別れたっきり逢えなくなった紫衣がいたんだ。


左近に頭を撫でられ目を細める紫衣。


俺に見せた表情と同じ表情を左近にも見せているのか?



二人の姿を見ているとイライラと心がささくれ立ってくるのがわかった。



「左近、席をはずせ。」



突然の俺の言葉に左近は驚いたように目を見開いたが紫衣に大丈夫だからと一言声を掛けて俺の言葉に従い部屋から出て行った。




左近を目で追う紫の瞳は不安に揺れていた。


左近を信頼しているのだろう。


半年という期間、俺は川原でお前を待っていたのだ。


その期間お前は左近と暮らしていたのだな。


一度も俺に逢いに来ず左近と楽しく暮らしていたのか?



ギリギリと締め付けられるような胸の痛みに俺は顔を歪めていた。