僕の足は保健室とは逆の方向に進んでいく。
手の方はポケットにつっこみ、鉛筆と消しゴムと紙があることを確認していた。
…多分、空いてるだろうなぁ。
そう思いながら階段を駆け上がっていく。
着いた所にあるドアはやっぱり鍵がかけられていなかった。
今更ながら、この学校の管理能力のなさに感謝する。
迷わずドアを開くと、生暖かい風が僕の肌をなでた。
青い空、白い雲、暖かい風…。
想像力をかきたてるには十分な材料が、
ここ屋上には揃っていた。
ポケットから折り畳まれた紙を取り出し、
鉛筆で頭の中のイメージを具現化していく。
気に入らないところは消しゴムで消しながら、
夢中になって描き進める。
…多分、僕は今最輝いていることだろう。
絵を描いている時は生きている心地がする――。
僕は本当に単純な人間だ。