「ふうん…、ああそう」
何なんだよ、こいつ。
「はい!それでは、失礼いたしますっ」
彼女は、最後にニパッと微笑んで見せるとそのまま立ち去って行った。
本当、面倒臭いよね。
「……う、っ…」
頭がぐらついて、堪らず私はその場に倒れ込んだ。
冷たい道路に横たわっていると、頬に何か冷たいものが落ちた。
「あー…。…雪だ」
霞む視界の中で、天を仰ぐと途方もなく向こうの暗闇から白い雪が舞い降りて来る。頬に落ちても、私の頬が燃えるように熱いから、雪はすぐに溶けてただの水滴に変わる。
「……始、さん」
朦朧とする意識の中で、彼の名前を呟いてみた。
始さん──