「はぁー、それにしても冷え込みますねぇ。もうすぐクリスマスだからイルミネーションが綺麗です」


彼女は、真っ赤になった手を擦って、息を吹き掛ける。



「…ったく、そんなになってまで俺なんか待たないでよ」


居た堪らなくなった俺は、仕方無く彼女の首に自分が身に着けていたマフラーを巻き付けた。

うわ、首元寒い。



「だ、ダメですよ!始さんが寒くなっちゃいます」

「あー、寒くないから別に良い」


ウソだけど。


「…んーと、霜焼けできちゃいますかねぇ」

「知らないよ」



彼女の綺麗な指が霜焼けになるのは、いくら他人でも、いくらストーカー行為に迷惑している俺でも、我慢できなかったんだ。




「ふふふっ」


横で突然笑い出した彼女。流石に、頭の方が心配になる。



「何?」

「やっぱり、始さんは優しい人です」



何を言い出すのかと思えば、くだらない。

俺が、優しいだって?



「…優しくなんかないよ」


俺がもっと優しければ、寒さに凍える君を抱き締めることくらいできるはずなのに。